TOCという理論があります。簡単に説明すると、製造工程をいくつかの工程に分けたとき、その製造工程のうち、必ず一つはボトルネック工程、即ち、相対的に足を引っ張っている工程が存在する、と考える理論です。例えば、A工程、B工程、C工程という3つの工程があって、それぞれの生産能力が200個/時間、100個/時間、300個/時間だとすると、この場合のボトルネック工程はB工程ということになります。企業はB工程を改善することで生産能力を高めることができますが、逆にA工程、またはC工程をいくら強化したところで企業全体の生産能力には何ら影響することはありません。
さて、このTOCを人のキャリア開発に当てはめて言うことができないでしょうか。何を言っているのかというと、例えば「世界の消費者を相手に車を売りたい」と考えている営業マンがいたとします。そして「世界の消費者を相手に車を売ること」の条件が、A.営業力があること、B.車の品質が良いこと、C.英語が堪能であること、であるとします。今、この営業マンは、学生時代に接客系のバイトを通じて養った類稀なる営業力を持っていて、かつトヨタの使用人だったとしたら、上記のA.とB.は既に満たしているわけです。この営業マンの目標を達成するためのボトルネック工程となっているのはC.の英語力ということになります。もうあと英語の能力さえ身に付けられれば彼の目標は見る見るうちに達成されていくことになりますが、彼がさらにA.営業力を身につけたとしても、B.トヨタの車以上の性能を持つ会社に転職したとしても、彼は世界の消費者に1台の車を売ることもできません。
こう聞くと当たり前のことのようですが、結局何が言いたいのかというと、昨今の「英語ぐらい話せて当然」という社会の風潮には若干行き過ぎた感があるのではないかということです。少なくとも管理人は自分の目標からすれば、英語を身につけることよりも会計の能力がボトルネックだったので、同じ時間を使うとしたら今はあるべき道に進めているという自覚はあります。今やろうとしていることが自分の目標にとってボトルネック工程になっているのか、それさえ身につければ見る見るうちにあるべき自分に近づけるのか、他に隠れたボトルネック、即ち、本当になすべきことは他に無いのか。まぁ使用人というさしたる権力も無い立場からすればこんな完全市場を前提にした話がそのまま当てはまる訳は無いんですが、こういったことが本来のキャリア開発のあるべき形ではないかと思います。皆がやっているから自分もやってみようかというのはあまりに短絡的で発展性の無い話ではないでしょうか。